さて、今回は前回の「江戸和竿の元祖『いなり町 東作本店』で買ったハゼ釣り用の和竿|江戸の粋な職人技に圧巻!の巻」で、予告した通り実際に購入した和竿でハゼ釣りに行った時のことを書こうと思う。
注※(この記事は前回同様、流行り病渦に入る前の事であることを、ご了承願いたい。)
この日、訪れたのは江戸川放水路にある「伊藤遊船」である。
こちらはボート釣り、桟橋での釣りはもちろん遊漁船にて東京湾での「アジ」「タコ」「アナゴ」等の海釣りにも対応している。
この時は確か10月の末くらいで、良い型のハゼが釣れる頃合いでもあるのだ。
人生初の江戸和竿♪筆おろしならぬ、竿おろしである。
筆おろしとかいうと、ついエッチな方の「筆おろし」を想像してしまうが、そんなふしだらなことではない。
「釣り竿界のフェラーリ」と、私が勝手に崇め奉っている「江戸和竿」を、恐れ多くも平民であるこの下僕が、初めて使わせて頂くという、罰当たりなくらい尊い儀式なのである。
なので、どんな些細であろうと、粗相などあっては決して許されないのだ。
ハゼ釣りの粋なスタイル
ハゼ釣りは子供から大人まで、お金を掛けずに誰でも気軽に出来る楽しい釣りである。
そう、「ハゼ釣りなんて安い竿で充分だし、金をかける必要なんかない。」という方が大多数だろう。
うむ、ごもっとだ。
あなた達の考えが正しい。
だが、そこをあえて伝統を受け継ぐ和竿職人お手製の「江戸和竿」で「誰でも釣れるハゼ」を釣るのが、粋なのだ。
左:東作本店「水雷竿」、右:伊藤遊船で買った中通し竿
ちなみに右の伊藤遊船で買った竿は安いものではあるが、とても使いやすく気に入っている。
そして左の「水雷竿」。
継ぎ手に美しく施された「変わり塗り」を輝かせながら、その存在感を示している。
おおっ、何と気高いのだ...
水雷竿って何?
水雷竿とは4尺以下の短い和竿で、船の真下を狙う釣り竿なのである。
アタリを拾い、魚が仕掛けに乗ったら手で糸を手繰り寄せるという独特の釣り方だ。
竿が短いのでボートの上での取り回しがしやすいのがメリット。
竿より長く糸を出すので、ハネ込みという訳にいかない。
ハネ込みって何?
ハネ込みとは、道糸を含めた仕掛けの長さが竿の長さと同じ、つまり竿を立てた状態でハリが竿尻にくることをそう呼ぶ。
なので、掛かった魚を竿の操作だけで手元に収めることを「ハネ込む」と言うのだ。
初の『和竿』で、ハゼの小刻みな引きを感じた喜び!
放ったらかし用のリール竿の仕掛けを投入後、ほぼ同時に伊藤遊船の竿と和竿の仕掛けを投入。
水深約2メートル、伊藤遊船の竿も2m(1.8mだったかな?)くらいだから、楽にハネ込めるだろう。
和竿の方は糸を手繰る必要がある。
仕掛け投入から間もなく和竿の方にアタリがあった。
「ビビビビビビビビッ!」
小刻みな引きが凄くダイレクトに伝わる感じがした。
「おお!これが和竿の感触なのか!」と感動したと同時に、「この感触を中断させたくない!」と思ったが、そういう訳にはいかない。
糸を掴み、竿を置き、糸を手繰らなければいけないのだ。
そして1匹目を釣り上げた。
決して「ヒネハゼ」と呼べる大きさではないが、まるで初めて魚を釣ったかのように嬉しかった。(笑)
ヒネハゼって何?
春先に生まれ夏くらいまで育ったハゼをデキハゼ。
越冬して次の年に産卵せず、生きのびたハゼをヒネハゼ。
(ハゼは産卵後に死んでしまう。)
ハネ込み用の竿にもヒット!
左手に「水雷竿」、右手に「ハネ込み用の竿」を持つという、変なおじさんスタイルだが、本来は同じ水雷竿を2対両手に持って釣るのが、古くから江戸前に伝わる釣り方だ。
だが、高価なので2対も買えないのである。(涙)
そして「ハネ込み用の竿」にヒット!
型は1匹目と同じくらいだな。
数匹釣ったのち場所を移動し、「水雷竿」の方にヒット!型も良くなってきた♪
場所を変えながら釣ること数時間、この日の最大サイズのハゼが釣れたよ♪
今晩はハゼの天ぷらじゃぁ!
この日に釣れた数は確か48匹くらいで、決して自慢できる釣果ではないが、良いのだ。
この日はあくまでも、「いなり町 東作本店の高級江戸和竿」の竿おろしという神聖なる儀式であったのだから。
そして何の粗相もなく無事に「竿おろしの儀」を終えることが出来た。
その祝いの料理は「ハゼの天ぷら」であることは言うまでもない。
「今日はいつもより多めにビールを買って帰ろう」と胸を弾ませたのであった。